TBD の実力

Demonstration on Pilot-Plant Scale of the Utility of 1,5,7- Triazabicyclo[4.4.0]dec-5-ene (TBD) as a Catalyst in the Efficient Amidation of an Unactivated Methyl Ester
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/op300210j
OPRD

  • 要約


アシル交換の効果的な触媒として知られる1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)を使ったエステルからの直接アミド化.パイロットプラントスケールでのデモンストレーションである.反応はトルエンあるいは2-MeTHF溶媒中で実施.トルエン溶媒でDoE解析を行っており,影響因子は大きい順にTBDの当量および反応温度である模様.主バイプロはエステルの加水分解体およびオキサゾール環が分解して生成するニトリル体.そのため,許容水分量を設定して反応を行っている(target ≦0.10%).TBDが0.3 eq,エステルが1.06 eq.と小過剰.反応温度は68-72℃,反応後晶析処理で粗結晶を得,その後再結晶処理でAPIに導いている.TBDのコストは2,400 USD/kg in 10-kg lots, Aldrich.

  • 所感

2006年にHedrickらによってTBDの有用性が見出されて以来,かなり多くの情報が溜まってきたことになる.僕が出ていたゼミでも何度か紹介してもらった記憶がある.短工程化が可能で,なおかつルイス酸使用や超強熱条件を避けることができ,除きやすい.水を嫌うようなので扱いづらさはあると思うが,プロセス向きな反応と言える.原料となるエステルが結晶で用意できれば水の問題もさほど気にならないだろう.積極的に使って行きたい.気になるTBDの高活性の要因については, J. Org. Chem. 2009, 74, 9490–9496 に述べられているが,掻い摘むと,

  1. プロトンドナーアクセプター構造になっているので,カルボニル基を活性化し且つその反応点近くにアルコールまたはアミンをおびき寄せることができる(酵素反応likeっていうのか,エントロピー的に有利ってことっすかね).
  2. ”ツイストアミド”構造.つまり,活性中間体であるアシル化TBD(ATBD)が,平面構造を取れず少し歪んでいるがために安定性を失い,高活性になっている.

この2点が肝である模様.


すなわち,”ツイストアミド”が重要なわけだから,ちょっと員環数が異なるグアニジン誘導体を持ってきても活性は見込めないってことなんだろうな.TBD ピンポイントであることに注意したい.限られた時間で条件ふる時はTBDがダメならグアニジン系はあんまり粘らずにサッサと諦めるようにしようかね.